台湾の輸入規制強化で日本に協力と理解を要請

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台湾の衛生福利部は4月16日、日本からの輸入食品に対する規制を5月から強化すると発表した。台湾が定めた新たな規制措置は5月15日から実施するとし、15日以降、日本の港及び空港を出発したすべての日本食品に対し、都道府県別に産地表記した証明を義務づけるほか、東京など一部の地域で生産した水産物やお茶、乳幼児向けの製品などに放射性物質の検査を義務付ける。

台湾では、以前より東日本大震災直後の原発事故の影響をうけ、全国5県(福島、茨城、栃木、群馬、千葉)で生産・製造された日本食品の輸入を規制していた。これについて日本の対台湾窓口である交流協会などは台湾側に対し、これまでも規制解除の要請を行っており、台湾の立法院は昨年10月の時点で衛生福利部に同規制の緩和問題を検討・対処するように指示していた。しかし、衛生福利部はこの問題に対する積極姿勢を取らないまま、その矢先の3月24日、同5県で生産・製造された食品が台湾に流通していたことが発覚。国民からの台湾政府への不信感を高める結果を招いた。この事由により立法院は3月末、衛生福利部に対し2週間内に政策を打ち出すように強く要求。このほどの規制強化の実施に至った(台湾政府関連筋情報)。

日本側は新規制の実施について、菅義偉官房長官が農林水産品の主要輸出先である台湾の規制強化に対し「遺憾」の意を表明したほか、農林水産相の林芳正大臣も4月14日の閣僚会議後会見で、「日本から科学的根拠に基づく輸入規制の緩和を再三求めてきたにも関わらず、一方的に規制を講じるというのは極めて遺憾」との認識を示した。また、台湾との貿易を主に行う日本企業の話によると、今回の規制発表で、台湾に輸出するはずだった日本製のお茶や菓子類など80アイテムを一旦ストップさせ、新規制実施まで様子を見ているという。日本企業側がこの規制強化で最も受け入れがたいとしているのは、生産地だけでなく本社が同5県に所在する場合でも放射能検査を受けることが義務付けられた事を指摘しており、これによる手間やコスト増の懸念からと見られる。

日本側の報道では、台湾が日本の食品を一方的に拒否しているように捉えられている傾向があるが、台湾政府関連筋はこの規制強化を「台湾の国民に日本の食の安全性をPRし、理解を得て安心して日本食品を購入して頂くため」の策だとしている。台湾の馬英九総統も4月14日、総統府で行った日本メディアとの記者会見にて「(日台が)協力して問題を解決し、信頼性を高めていかなければならない」と述べ、台湾側は日本との協力関係により理解を促し、相互の信頼関係の構築を目指したい考え。

さらに、台北駐日経済文化代表処の沈斯淳代表は4月26日、台湾新聞に対し「未来の日台間における農産品の貿易促進のため、日本側の関係者らにご協力頂き、生産地などの情報を明確にすることで台湾の民衆らに安心して日本食品を消費してもらえるようにしたい」と述べたほか、「お互いが冷静になって考慮することが最も重要」とし、代表処は今後、日本政府らに対し同規制強化の背景を説明して理解を得られるよう努力していく意向を示した。

 

 

千葉県の食品安全管理の実状視察で相互理解促す

台湾立法院の王金平院長は4月6日より9日までの4日間、立法院の李鴻鈞委員、陳唐山委員、邱議瑩委員などの委員14人及び関係者総勢約30人の訪日団を結成し訪日した。

台湾立法院の王金平院長は立法院の委員14人及び関係者総勢約30人の訪日団を結成し訪日した
台湾立法院の王金平院長は立法院の委員14人及び関係者総勢約30人の訪日団を結成し訪日した

 

一行は4月8日、森田健作千葉県知事の同伴のもと千葉県の農林総合研究センターを訪れ、放射線物質検査施設で千葉県産長ネギに含まれる放射線物質量の測定実務などを視察した。日本における食品安全管理状況を把握するために行ったもので、日台間の意識格差に相互理解の必要性を認識した。

千葉県農林総合研究センター・放射線物質検査施設視察の様子
千葉県農林総合研究センター・放射線物質検査施設視察の様子

視察後に行われた意見交換会では、立法院の李委員から「食品が安全であるかどうか判断する際に、正式なラベルを張るなどの対応をとってほしい」という提案が上がり、これに対し森田知事は「台湾の方と私たちとの考え方に差があった。私たちは問題ないと思っていても、親日である台湾の方がここまで不安や疑問を持たれているのだから、私たちは疑問を解くために努力しなければならない。千葉県として出来ることは一生懸命やる。安全保障のラベルの件もしっかりと検討していく」と述べ、「王院長をはじめとした立法委員の皆様に視察に来ていただいたことは、輸入規制問題において大きな一歩となった」と感謝の意を示した。

立法院の李鴻鈞委員
立法院の李鴻鈞委員

王院長も、「今回の視察は、日本の食品輸入規制緩和検討の参考となった。実際にこの目で見た実状を踏まえて行政当局に相談したいと思う。台湾としても厳しくチェックさせていただくつもりだ。今後、資料の提供などを求めるがご協力いただきたい」と今後の協力関係を呼びかけた。

握手を交わす森田健作千葉県知事(左)と立法院の王金平院長(右)
握手を交わす森田健作千葉県知事(左)と立法院の王金平院長(右)

なお、昼食は千葉県東金市の八鶴亭にて、タケノコの炊き込みご飯やマダイの刺身など千葉県産の旬の食材を使った料理を堪能した。王院長と森田知事は千葉県の地酒で台湾式の“乾杯”(すべて飲み干すの意)をし、今後の友好関係を約束した。

昼食会にて。千葉県産の旬の食材を使った料理を堪能した。
昼食会にて。千葉県産の旬の食材を使った料理を堪能した。

 

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