「アリガト謝謝」作者、多額な義援金の背景について言及

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「アリガト謝謝」の作者・木下諄一氏

 

東日本大震災発生の際、台湾から多くの義援金が送られた過程を、現地目線で書かれた「アリガト謝謝」の作者・木下諄一氏は3月11日、文京区民センターで行った自身の講演会で、「大震災の際、なぜ台湾人は200億円もの義援金を寄付したのか」についての見解を述べた。木下氏によると、「台湾人のやさしさ」「お金に関する観念」「日本人が好き」の要素が組み合わさった事が、多額の義援金に繋がったのではないか、という。「この3つの要素は乾燥した枯れ草のようなもの。『日本のために何かしたい』との想いがこの要素に火を付けたらすごい勢いで燃え広がった」と、当時の台湾人のパワーや情熱がどれだけ大きいものなのかを伝えた。

さらに木下氏は、義援金を寄付した台湾人のいくつかのメッセージを紹介。ある台湾人は大震災に対し「同胞受難的感覺(他人事とは思えない事が自分自身に降り掛かってきた)」と話していた事、老舗パン屋が行った「3日間の売上を全て寄付」とのチャリティーイベント中、常連客が「錢不用找(おつりはいらない)」と店員に言った事など、当時の取材ノートをもとに、寄付した背景にも触れながら、来場者に伝えていた。

木下氏の講演を聞きに沢山の来場者が駆け付けた

一方、題名中の「アリガト」の部分についての裏エピソードも話した。「アリガト」は元々「アリアト(台湾人が『有難う』と発音する時この発音になるため)」という題名だったが、原稿締め切りの前日会議で急遽、「アリガト」に変更する事となったそうだ。木下氏は「その日は徹夜で直した。次の日無事に入稿できましたよ」と話し、来場者の笑いを誘う場面もあった。

同書は、各所で行われた募金活動の背景、日本人女性が成し遂げた軌跡の感謝広告「ありがとう、台湾」について執筆した約7割ノンフィクションの一冊である。2013年秋、木下氏はある人より「被災地が台湾の事を知りたがっている」と言われた言葉に反応し、自分は30年台湾在住だから台湾について知っている方である事、自分が物書きである事から、「自分でも何かできるかもしれない」と想い、同書執筆に至ったという。被災地の子供たちが10年後20年後、この本を手にして読んで、当時の台湾人の想いを知ってもらえたら良い。長期スパンでこの本を捉えてほしい」(木下氏)。