鴻海郭会長総統選出馬へ ~国民党予備選参加の意向を正式表明

0
台湾鴻海精密工業の郭台銘董事長

台湾鴻海精密工業の郭台銘董事長は4月17日の午後、2020年1月に実施される次期総統選の野党国民党公認候補の党内予備選に参加すると表明した。予備選で選出された場合、国民党代表として総統選に立候補する事になる。同日、台北市内で開かれた国民党主催の「郭氏に栄誉賞を贈るための式典」で明らかにした。

次期総統選の出馬を同16日にも公表し、関帝を深く信仰する事で知られる郭氏は「媽祖神様からの指示で」との理由で立候補したとみられる。郭氏は同17日、故郷の新北市板橋にある「慈恵宮」と同市淡水の「行天武聖宮」を参拝し、出馬に関して神に指示を請うた。

郭氏の国民党予備選出馬を巡っては、目下、郭氏が有効な資格を有するのかどうかに関心が集まっている。党によると1970年の入党後、2000年の党員再登録では未手続。党の担当者は同17日、「郭氏は同16日に党員手続きを済ませ、党員の基本的権利と義務を有している」と説明。しかし、党の規定では党員として選挙に立候補するには入党あるいは党籍の回復後4カ月の経過期間の必要がある。党担当者は「まだ予備選の本格的な作業は始動していない。制限に該当するかなどの問題については未定」とした。なお、党は7月に総統選の公認候補を決定したい意向を示している。
なお、郭氏は国民党に対し、「開かれた地に足の着いた予備選の制度を作り上げる」と呼び掛け、「予備選には喜んで参加するが、強制指名には断固として応じない」と述べた。さらに、予備選で落選した場合は「予備選を勝ち抜いた候補者を必ず支持する」とも語った。

郭氏は故郷の新北市板橋にある「慈恵宮」を参拝し、出馬に関して神に指示を請うた。

郭氏は2016年にも国民党から総統選へ出馬することが取り沙汰された経緯がある。しかし当時、総統になるためには立候補に際して中央選挙委員会に財産を申告し、総統に就任すれば保有していると推察される85億米ドルの財産の信託の義務付けがあった。さらに、総統退任後も国家機密保持のために一定期間はアメリカや中国などに自由に出国できず、鴻海の経営もこれまで通り携わる事が困難になる。こうした理由から、総統選出馬への出馬の有無が焦点となっていた。

今回の出馬表明で台湾の財界からは「思い切った決断」との声があがる。郭氏は今年1月に公式フェイスブックを開設。3月には公式LINEアカウントを作るなど、対外発信を積極化させ「2020年の総統選へ意欲を示した」(関係筋)とみられていた。4月16日には郭氏が予備選立候補をほのめかしていたため、注目が一気に集まっていた。

郭氏に期待されているのは台湾が抱える経済問題の解決。所得格差や賃金の伸び悩みなどが社会的問題に対する打開である。問題解決の突破口が中国との経済交流だ。これまで、親中国路線を訴える国民党は馬英九前総統のもとで中国との経済関係を強化していた。対中融和路線の最大野党・国民党からの出馬を目指す郭氏は、事業の中核を置く中国の政財界との関係が深く、仮に総統となれば、対中安全保障の要である米国との関係維持が課題となる。なお、鴻海は米アップルのスマートフォン(スマホ)などの生産を担い、年間売上高は19兆円規模。郭氏は一代で同社を築いた台湾を代表するカリスマ経営者だ。16年に買収したシャープの経営にも影響力を持つ事でも知られている。(写真提供:中央社)

 

(広告)


(広告募集中 TEL:03-5917-0045 FAX:03-5917-0047 info@taiwannews.jp 担当:黄 )