日本が台湾にワクチン提供を早期実現〜「10日間静かな作戦」の裏

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日本疫苗過剩,旅日僑團呼籲政府直接購買(圖為6/4日本提供疫苗給台灣,代表處提供)

 日本政府が台湾に無償提供する英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン124万回分が6月4日、日本航空JAL-809で桃園国際空港に到着した。台湾の安全保障部門は今回のワクチン寄贈が実現するまでの経緯を説明し「10日間の静かな作戦」と呼んでいる。台湾政府は「最高機密」を位置付けたこの計画は最初、日本政府に国際的枠組み「COVAX」を通じて台湾に提供する案と検討されたが、台日双方の協力と米国の後押しによって早期実現が可能となった。

 5月24日、台湾の対日窓口「台北駐日経済文化代表処」で、台湾の謝長廷代表(大使に相当)と米国のヤング駐日臨時代理大使が会見し、薗浦健太郎元首相補佐官も招かれていた。同会見では5月中台湾の感染拡大に言及し、薗浦氏が「日本はアストラゼネカ製のワクチンを公的接種では当面使わない。それを台湾に譲る動きもある」と答え、ヤング大使もこの意見に賛成した。謝代表はこの報告すぐに蔡英文総統に伝えた。

 謝氏の報告を受けた蔡英文総統は即座に「内密に目標達成」を最高原則として、安全保障や外交部門に総動員の指示を下した。長年にわたって日本政界に関係を築いてきた頼清徳副総統は自らの人脈を活かし、日本の重要人物に連絡を取り、日本の支援を要請し、好意的答えを得た。

 一方日本側に、薗浦氏は会見の翌日に安倍元首相と会い、台湾側とのやりとりを報告し、協力を要請した。安倍氏も賛成してすぐに日本政府の連絡責任を担った。ワクチンは国有財産として、まずは麻生太郎副総理兼財務相に報告した上で、菅義偉首相の支持を得た。中国からのけん制を警戒しつつ、水面下で慎重に準備を進めてきた。

 最初には、日本外務省が国際的枠組み「COVAX」を通じて台湾にワクチンを提供する案を検討した。しかし安倍氏らの関係者から「それでは時間がかかりすぎる」との声が続出。感染拡大を直面し、中国と野党から激しい批判を受けた台湾側も「スピード重視で対応していただきたい」との意向が伝えられていた。日本側は一転、日台間の相互援助としてワクチンを提供する方針を決めた。

 5月28日、日本は台湾にワクチン提供を検討することが報道され、中国外務省はこの計画について「目的は達成できない」とけん制した。しかし日本国内はこれまで東日本大震災の義捐金や、昨年台湾に医療マスクを支援されたことから、台湾を応援する声が高まった。台湾政府も最近野党による「ワクチンの乱」に陥りながらも「内密」の原則を守り、日本の報道が出ていても「航空機に乗せられるまで認めない」と堅持し、口を閉ざしたままだった。

 米国も今回の事態を最後まで後押ししてきた。ワクチンが台湾に搬運された際、沖縄の米軍基地から戦闘機が日本航空の飛行機の近くに接近し、中国に圧力を与えたというニュースが台湾メディアに報道された。

 今回届いたアストラゼネカ製ワクチンは124万回分で、今まで日本が保有していた全数だったとみられる。台湾の安全保障部門によると、日本の関係者から「現時点ではこれだけしかなく、申し訳ない」という言葉をかけられたという。

 なお日本からのワクチン支援を受け、台湾のSNSでは「ありがとう、日本」「コロナ禍が終わったら必ず日本に行く」と感謝の声が高まっている。