李登輝友の会がシンポジウムを開催 日台の連携強化を

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パネルディスカッション。左からコーディネーターの浅野氏、パネリストの櫻井氏、福島氏、渡辺氏、林氏

安倍前首相を追悼  「蔡英文総統、国葬に来て!」

今年は日本が台湾と断交して50年の節目にあたることから、「日本李登輝友の会」は7月24日、東京都内で、「日台関係の50年-何を失い何を得たのか」というシンポジウムを開催した。蔡英文総統とオンライン会談したことがある親台湾派の高市早苗・自民党政調会長が基調講演し、4人のパネリストが日台関係や安全保障についてそれぞれの立場から情勢分析を示して意見を述べた。4人はジャーナリストの櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長)、▽ジャーナリストの福島香織氏、▽同会会長の渡辺利夫氏(拓殖大学顧問)、▽同会常務理事の林建良氏(日米台関係研究所理事)。ともに日台関係の最前線にいて事情に通じている。

 シンポジウムでは、今月8日、日台関係に貢献してきた安倍晋三元首相が凶弾に倒れ死去したため、安倍氏を追悼する言葉が続き、登壇者から「9月27日の安倍氏の国葬には、蔡英文総統の参列を」という声があふれ、会場を埋めた約400人からも共感を得ていた。

 安倍氏は、李登輝元総統(2020年7月死去)と親交が深く、自ら親台湾派だと旗幟鮮明に行動してきた。台湾内でも人気が高い。蔡総統も安倍氏とは、1期目の総統就任前の2015年10月、日本を訪問し、マスコミの目をかいくぐり安倍首相(当時)とひそかに面会したとされている。

 会場内には安倍氏と李氏がにこやかに握手を交わす写真が飾られ、冒頭、参加者全員により1分間の黙とうが2人にささげられた。

 基調講演に立った高市政調会長は、「安倍元総理なくして現在の日台関係なしと思う」と述べ、安倍氏の功績を高く評価。「安倍氏のご遺志を多くの議員とともに引き継いで、台湾と一層強固な関係を構築したい」との決意を述べた。

基調講演する高市会長

 そのうえで、「政調会としても政策面でも連携を強めていかなければ、互いに守り合えないと強く意識している」と表明し、連携強化の方針を示した。

 また、中国から「1国2制度」を約束されながら、民主主義や言論の自由が踏みにじられた香港に言及して、「台湾を第2の香港にしてはならない」とも強調した。

 続いて、浅野和生・同会常務理事(平成国際大学副学長)のコーディネートでパネルディスカッションが行われ、パネリストの一人が「(安倍氏の国葬に)蔡英文総統が来てほしい。日本は国葬を戦略的に活用しなければならない」と述べた。その理由を、国葬には世界からそうそうたる人物が多数、訪れることになる、そういう場に蔡総統が参列すれば、日本政府は世界に向け(外交、安全保障について世界に日本の立場を示す)メッセージを出すことになり、強いアピールになる、などと説明した。

 他のパネリストからも同意する意見が相次ぎ、「この場で蔡総統の招待を決議しよう」、「蔡総統の(国葬参列の)日本訪問は、何ら問題はない」、「(中国以外は)世界の誰も問題視しない」などの声が上がった。

 日台の連携については、パネリストから「米国は台湾との関係を規定する『台湾関係法』を制定している、同じように日本も『日台交流基本法』を制定しなければならない」、「モントレー対話に、日本がオブザーバーとして参加するべきだ」などと具体的な提言があった。

 モントレー対話とは、米国、台湾の軍高官、安全保障担当高官がモントレー(米カリフォルニア州)で毎年行っている協議のこと。これに対し日台間の協議ではそれぞれの与党である自民党、民進党の間で外務、防衛担当者による「2プラス2」が行なわれているものの、政府間同士の表立った話し合いの場はなく、日台米の情報共有のレベルアップが求められている。

シンポジウム後、参加者と談笑する林氏

 参加した一人、男子大学生(20歳)は「安倍前総理が日台関係強化に貢献していたことを初めて知った。とても興味深く、自分の大学での勉強に大いに役立った」と感想を話した。他にも、高市氏らの話に感じ入り、シンポジウム後、会場で李登輝友の会に入会申請する参加者もいた。同会の今後のセミナーなどの予定、入会申請などの詳細は同会の公式HPで。