台湾対日本窓口機関・台北駐日経済文化代表処の台湾文化センターは3月15日、墨彩画家藤井克之氏の展示会を開催した。台湾の日常生活や旅の風景絵の作品が展示され、ネット上で大きな反響を呼んでいる。
藤井氏の愛娘小百合さんは、台湾で日本語教師として暮らしていたが、2016年に病気で帰らぬ人に。藤井氏は小百合さんが過ごしていた台湾各地を訪れ、台湾をテーマに創作。作品はすでに台湾で展示されているが、謝長廷駐日代表の誘いにより、台湾文化センターでの個展を決めた。
開幕式に出席した謝代表は挨拶で「初めて藤井先生のことを知った時にはすごく感動した。愛娘への思念を台湾の風景画で表現し、日本と台湾のかけ橋にもなってくれた」と称賛した。藤井氏は「娘がうつ病になってからずっと辛かったため、台湾旅行で気分転換にしようと薦めると、台湾のことをすっかりハマってしまった」と小百合さんと台湾のつながりを紹介した。小百合さんが病気で亡くなったあとにも「もし娘がまだ生きていれば、台湾で何をやっているだろうと、ずっと想像した」と当時の心境を明らかにした。この時救いの手を差し伸べてくるのは、小百合さんの台湾友人だったという。
「台湾の絵を描けば、娘も喜んでくれる」と台湾の友人からのアドバイスで、藤井氏は何回も台湾を訪問した。小百合さんが残した足跡を従い、愛娘が見た風景や、食べたものを全部試したという。「台湾旅行の経験を積み重ね、娘はどうして台湾に暮らしたい理由がわかった」と語った。
台湾文化センターは、開幕式となる3月14日がホワイトデーでもあることから、藤井氏に小百合さんと漢字の書き方が重なるユリ（百合花）の花束を贈呈した。「今回の展示会を通じて日本の方に台湾の魅力を感じてもらいたい」とコメントした。
なお、藤井一家を物語る映画「ひとりの家族旅行」は2024年の公開が予定されている。展示会は4月14日まで開かれる。
