9月24日付『日本経済新聞』の一面トップは、「日米、対中で緊密に連携」。そのわずか翌25日には、「台湾問題で米国に譲歩迫る」との見出しが躍った。この二つの見出しを並べてみると、トランプ米大統領を前にした、台湾海峡をめぐる二つの異なる声が鮮明に浮かび上がってくる。
前者は、日本の高市早苗首相から発せられた声である。
高市首相は米中首脳会談の2日前、トランプ大統領と会談し、中国や経済安全保障などをめぐって意見を交わし、日米が緊密に連携していくことを確認した。高市首相はさらに、この時期に日米首脳会談を行うこと自体が、世界に「日米同盟の強さを示す」ことになると強調した。台湾海峡の平和と日米同盟が、ますます密接に結びついていることを示すものでもあった。
後者は、中国の習近平国家主席から発せられた声である。
その2日後、習近平氏はトランプ氏との会談で、米国に「台湾独立に反対する」よう求め、台湾問題を慎重に扱うよう要求した。北京が求めているのは、これまで米国が示してきた「台湾独立を支持しない」という立場にとどまらず、さらに一歩踏み込んだ「台湾独立に反対する」という立場なのである。
先に高市早苗、後に習近平。この外交日程の順序は、今振り返ると非常に意味深い。
高市首相が米中首脳会談に先立ってトランプ氏と会談したのは、決して偶然ではない。会談後、高市首相自身が「近く行われる米中首脳会談も念頭に」、中国をめぐる諸課題についてタイムリーに意見交換したと明言している。つまり、トランプ氏と習近平氏が交渉のテーブルにつく前に、日本は自国の安全保障上の懸念を先にワシントンへ伝えたのである。
その理由は明らかだ。台湾海峡で有事が起きれば、影響を受けるのは台湾だけではない。日本の沖縄や南西諸島、在日米軍、シーレーン、さらには半導体のサプライチェーンにも直接影響が及ぶ。日本にとって台湾海峡の平和は、決して対岸の火事ではなく、自国の安全に直結する問題なのである。
だからこそ、24日付『日経』の「日米、対中で緊密に連携」という報道は、翌25日の「台湾問題で米国に譲歩迫る」との報道を見て、その意味がより鮮明になった。日本が前日に懸念していた問題が、翌日には実際に米中交渉のテーブルに上ったのである。
習近平氏がその後、米国に「台湾独立に反対する」よう求めたことは、高市首相がなぜ先を見越して一歩早く動く必要があったのかを物語っている。トランプ氏がどう応じたのかについては、今後の米側の説明を待つ必要がある。
しかし少なくとも、北京が要求を突きつける前に、東京はすでに日本の立場をトランプ氏に直接伝えていた。日本の声は、確かにその場に届いていたのである。
米中は交渉できる。トランプ氏と習近平氏が取引することもあるだろう。しかし、台湾海峡の平和が大国間の取引材料となれば、その代償を払うのは台湾だけではない。日本、そしてアジア太平洋地域全体にも及ぶ。
『日経』の2日間の大見出しを並べてみれば、「先に高市早苗、後に習近平」という二つの首脳会談は、単なる外交日程ではなく、台湾海峡と日本の安全保障をめぐる外交上のせめぎ合いだったことが浮かび上がってくる。2026.9.27
資料提供:大田一博






































