三味線の音色で演じる昆劇「繍襦夢」、奇跡の融合が現実に

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日台の伝統芸能を融合させた公演「花開く伝統―日台の名作と新作―」が6月17日、横浜能楽堂で千秋楽を迎えた。同公演は、日本の横浜能楽堂と台湾の伝統芸能劇団・国光劇団が共同制作に挑んだ新作劇「繍襦夢」の初披露をメーンに、台湾の崑劇と日本舞踊の一部を上演するという贅沢な舞台となっただけに、同日も大勢の観客が来場し大成功で日本公演の幕を閉じた。

主演は崑劇のトップスター・温宇航

同公演は同9日と同17日に横浜能楽堂で、同10日に新潟県新潟市内、同16日に愛知県豊田市で上演された。今後は9月8、9日に台中国家歌劇院中劇場(台中市)、同14~16日に台湾戯曲センター大ホール(台北市)で上演される。

横浜能楽堂の舞台で台湾の崑劇を上演

千秋楽に合わせて来日した国光劇団を運営する台湾・国立伝統芸術センターの吳榮順主任は、「能楽というのは日本を代表する伝統芸能だ。今回、コラボレーションの相手として選んで頂いた事はとても光栄だと思っている」としたほか、「同公演は、日本と台湾でお互いに公演を行なう事に意味がある、コラボレーションというのは、お互いに助け合う事で始めて成功となる。台湾での公演にも期待したい」と想いを述べた。

台湾・国立伝統芸術センターの吳榮順主任

なお、17日の千秋楽には台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表を始めとした台湾の政府関係者、華僑団体の会長らも来場し、日台芸能の奇跡の融合を見届けた。

レセプションにて

 

作品を通じた日台の伝統芸能重鎮らの交流

「繍襦夢」の製作は、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターの朱文清センター長の働き掛けで始動し、3年前に横浜能楽堂の中村館長が台湾を訪れた際に、国光劇団とのコラボレーションが決定。日台の各分野を代表する芸術家が、日本と台湾を行き来し、相互理解を深め作り上げた。

主演の温宇航と相手役の劉珈后

物語は崑劇の古典作品「繍襦記」を下地に、夢幻能の形式を取り入れ、日本の三味線音楽を融合させている。主演は、国光劇団に所属しながら国際的に活躍する崑劇のトップスター・温宇航。相手は、注目の若手スター・劉珈后。音楽は、常磐津の三味線奏者・常磐津文字兵衛が音楽監督・作曲・演奏を務めたのに加え、長唄の今藤美治郎・杵屋秀子・今藤政貴らが日本から参加し、国光劇団の演奏家と共演した。演出は、台湾のコンテンポラリーシーンを牽引する王嘉明が務めるなど、まさに日台伝統融合の傑作となった。

関係者ら