台北国際ブックフェア よしもとばなな氏が講演

0

2013年台北国際ブックフェアが1月30日から2月4日までの日程で台北ワールドトレードセンターで開催されている。今年で21回目となるこの催しは、国内外から多くの出版社が出展し、小説、エッセイ、娯楽雑誌、専門誌、電子書籍、マンガなど、ジャンルにとらわれないイベントである。二日目の31日はワールドトレードセンター一館のテーマスクエアで小説家のよしもとばなな氏と、台湾人作家であるミミコ(米果)氏とベイリー(貝莉)氏による対談形式の講演会が行なわれた。

 

壇上左からベイリー氏、ミミコ氏、よしもとばなな氏。
壇上左からベイリー氏、ミミコ氏、よしもとばなな氏。

 

「恋人を失った風景ースウィート・ヒアアフターよしもとばななの癒しの本を語る」と題された講演会で、よしもと氏は冒頭、「台湾料理を食べ過ぎて、洋服のボタンが閉まらなくなった」とユーモラスに挨拶し、会場の笑いを誘った。「自分を癒すために書いていた」と22歳で初めて小説を書き始めた当時の理由を語り、「小さい頃から、その人を見れば、その人の事が何となく解る力を持っていた。その事で若い時は苦労した」と、小説を書く事を通して、癒しを求めていたことを明らかにした。しかし、次第に「多くの人が同じ気持ちだと言う事に気が付いた」とし、「私はもう50歳に近い年齢だ。もっともっと、若い人のためになりたいと思うようになった」と人を癒す小説執筆のきっかけを語った。

 

よしもとばなな氏
よしもとばなな氏

 

また新作である「スウィート・ヒアアフター」については「一言も地震や津波とかは出てきません。しかしこの小説は震災で亡くなった人と、親しい人を亡くした方のために書いた」とし、「生き残った人のためには沢山の人が力を貸す。でも、亡くなった人の魂を癒すことができるのは私ではないかなと思った」と語り、「文字によって癒されれば」と東日本大震災での犠牲者への願いをこめた作品であることを述べた。現地へ赴き、ボランティア活動に従事したいとの気持ちを抑え、最終的にこの著書の執筆に至った理由については、今も迷っていることを明かした上で「それぞれがそれぞれのベストをつくす方が良いと考えた」と文学の角度から東日本大震災の被災者を支援したいという考えを話した。

 

観客席を撮影するお茶目な一面も。この時の写真は自身のTwitterにもアップされた。
観客席を撮影するお茶目な一面も。この時の写真は自身のTwitterにもアップされた。

 

会場は女性を中心に100人以上の観客がつめかけ、立ち見が出るほどの盛況振りであった。また、多くの人が熱心にメモや動画をとっていたのも印象的だった。手帳2ページにびっしりとメモをとっていた女子高校生は、よしもと氏の著書を読む理由として、「(小説の内容から)自分自身のアイデンティティーが探せるのではないかと思っている。彼女の文体も好き」と話し、日本から本人が来て講演したことについては「まだ(ばなな氏の)本を読み始めて3年くらいだから、もっと彼女のことを知ることができてうれしい」と喜びを語ってくれた。また、この後には「スウィート・ヒアアフター」の朗読会とサイン会も行なわれた。

 

多くの人がつめかけた会場。
多くの人がつめかけた会場。