歴史の袋小路に入りつつある中共政権

0

(文 日本医療法人輝生医院 理事長 大田一博(王輝生))

中国の二十四史は、史記から明史へ、黄帝から崇禎(明王朝最後の皇帝)へと、成王敗寇と帝王興亡の歴史にほかならず、勝利者が自らを粉飾して覆い隠し、敗北者を揶揄して墓に送り込んで書いた歴史でもある。

だから、中華民国から独立した中華人民共和国は、その春秋の筆は容赦なく、その筆の下の前の朝は、肉腐って虫が出て、魚枯れて虫が生える政府だったので、彼らはやっと吊民伐罪(虐げられた人民を慰め,罪のある支配者を討伐する)、害虫を駆除する(腐敗を一掃する);天に代わって正義を司り、旧政権に取って代わる。

しかし、抑制と牽制の何もない権力は、人を早くから腐敗させ、中共政権も例外ではなく、成立してまだ60年余りしか経っていないのに、一歩一歩、歴史の輪廻の轍を踏むことを自覚せずにいる。『易経・泰卦・九三』の「無平不陂,無往不復」の卦辞を裏付けるように、物事が常に平坦でない、必ず険しい障害に遭遇することがある。物事は常に前進しているわけではない、必ず引き返す時がある。

 中国の歴代王朝、その開国皇帝は江山を統一した後、すべて休養し、勤勉に人民を愛することができて、中国は土地が大きくて物が豐富しているため、強がらない限り制覇すれば物阜民豊になることができて、残念ながら創業の辛さを知らない後継者は、往々にして足ることを知らず、止まることを知らず、兵を尽くし、強がることは壮を示して、国勢を頂点に達成させたが、物極必反の禍根をも植えた。秦孝公は商鞅が法を変えて富国強兵となり、玄孫の嬴政(秦の始皇帝)は勢いに乗って六国を併呑したが、天下を統一した後、民と休むことを知らず、逆に暴挙に出たので、二世だけで滅亡した。

漢の文景の治、国庫を充満させ、漢武帝は名将陳湯の「公然と疆漢を犯す者は、遠くても必ず誅する」という主張をとり、大いに戦争を起こし、人民を労して財産を傷つけ、それ以来大漢の国勢を振興させることができなかった。また、大唐玄宗皇帝が「開元の治」後、大清乾隆皇帝が「康乾盛世」後、功名心にはやる、覇権を争ったため、大唐、大清の盛衰の転換点となった。

老子は『道徳経』の上で「物壮則老、是謂不道、不道早已」(物事が成熟すると衰退し始める、これは「道」を反する行為、「道」に反するものはすぐに滅びてしまう)。「兵強天下、其事好還」(好戦的に兵力を行使する者は、その報いが必ず自分に返ってくる)の珠玉の名言の脚本を懇切に戒め、二千余年来、中国の歴史の舞台で、絶えず再演してきた。

中国共産党政権は毛沢東の主政期に、党が政権を取り、権力を一身に集め、三反五反、大躍進、人民公社など一連の逆道を行ったため、民生が疲弊して貧しくなった。鄧小平が登場した後、狂乱を挽回し、政経分離の開放改革政策を採用し、後継の江、胡体制も「蕭規曹随」、鄧の「韜光養晦」(外に光(実力)を隠して、内に力を蓄える)政策に従い、中国経済を飛躍的に前進させ、中国共産党成立以来の得難い盛世となった。

「行百里者半九十」何事も目標に近づくほど、慎重に恐れ、さらに努力してこそ、有終の美を遂げることができるということだ。

 

2020年5月28日、李克強首相は中国人民代表大会の記者会見に出席した際、「6億人の毎月の収入は千元にすぎない」と述べた。そして、この3年間、中国は武漢肺炎の猛威にさらされ、人民は苦しみに耐えられなかった。加えて、清零政策(ゼロコロナ)の厳しい実行の下で、外資が撤退し、中国の民生経済は、さらに悪化し、国民の不満が沸騰したため、白紙革命、白髪革命などの抗議が相次いだ。

このような状況は自由民主国家では、すべて重大な事件である。しかし、それでも中国の独裁政権者は、意外にも耳を貸さず、3月5日、中国は2023年度の国防予算を発表し、なんと昨年より7.2%増加し、1兆5537億元の天文学的数字に達したが、経済成長率は年々低下しており、兵力を窮めるために、民生を顧みず逆行し、自由世界を驚かせた。 

しかも、習近平は指導者としての地位を確立するために、昨年末の第20回全国代表大会で胡錦濤を露骨に排除して3期連続の任期を強要し、後継者を立てず、党・政府・軍を同時に掌握した。今年に入ってから、習近平の側近部下が全国人民代表大会、中国人民政治協商会議、国務院といった重要な機関の役職を露骨に占拠するようになった。

さらに、開会中の全国人民代表大会は、国家安全、金融、ハイテクに関する各種委員会を重畳して設立することを決議し、党中央に直属し、国務院を架空にし、鄧小平の党政分離政策に別れを告げ、毛沢東時代に復帰した共産党による政府を指導する古い路線を宣言した。戦狼外交も、大勢で呼応し、大漢王朝の班固が《漢書》で「犯我中華者,雖遠必誅(我が中華を犯す者は、遠くても必ず誅する)」と鼓吹したスローガンを高らかに歌い、狼の爪が四方に伸び、遠交近攻し、世界平和に赤信号が灯り、国際秩序も、空前の挑戦に直面している。

「人必自侮而後人侮之(人は必ず自分を侮り、そして後に人に侮られる)」。火遊びをする者は必ず自滅し、ついに米、欧、日、豪などの諸民主国家に見舞われ、一斉に非難され、四面楚歌の窮地に陥った。中国が「偉大な民族復興」の蜃気楼の幻の中で、また歴史の袋小路に入りつつあるのを見られ、もし「老子」が天国で知ったなら、ため息をつくに違いない。

※この文章は個人的な意見で、本紙の立場を表すものではありません。ご了承ください。