ナノキャリアが台湾・OEP社にがん治療新薬の製造権付与へ

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 抗がん剤を開発しているバイオベンチャーのナノキャリア(千葉県柏市、代表取締役社・中冨⼀郎)は10月1日、膵臓(すいぞう)がん治療の新薬「NC-6004ナノプラチン」の製造権を付与するライセンス契約に向けた覚書を、台湾の製薬大手、友華生技医薬(Orient Europharma Co.,Ltd. 以下、OEP社)と締結した。
 
 ナノキャリアは2008年10⽉、OEP社とアジア地域(⽇本、中国、インドを除く。以下同じ)を対象とした開発及び販売権を与えるライセンス契約を締結しており、進行性膵臓がんを対象に、台湾・シンガポールにおいて「NC-6004」の臨床試験を実施してきた。ナノキャリアの中冨社長によると、「NC-6004」は現在、世界ですい臓がん治療に広く使われているシスプラチンに比べ腎臓などへの副作用が少なく、血中有効濃度の持続時間も15分から72時間に飛躍的に伸びるなど優れた特性を持つ。現在PhaseⅡ(第2相試験)の段階で患者登録が終了し、本年度内には試験が完了する⾒込みだという。
 
 今回の本合意は、ナノキャリアの販売戦略である「NC-6004」の臨床試験実施の加速化とアジア地域を含めた早期申請・承認と、革新的な新薬開発を進め、アジア地域における「NC-6004」の製造による拡⼤を⽬指すOEP社の戦略が合致したもので、両社の戦略的な関係をさらに強化するのが目的。
 
 本合意の主な内容は以下の通り。
●アジア地域を対象とする「NC-6004」の開発及び販売権のライセンスを付与した従前の契約に替えて、新たに製造権を含むライセンス契約を締結する。
●新たなライセンス契約では、ミセル原薬(API)および最終製剤に関する全世界における⾮独占的な製造権をOEP社に付与する。
●膵臓がんを含め、アジア地域における「NC-6004」の開発に関しては、今後はOEP社が主体となり、ナノキャリアは共同開発の⽴場で協力する。開発費用についてはOEP社が負担する。
●OEP社は、今後、非独占製造権に対する対価として、開発、販売の段階に応じてナノキャリアに対し総額8億円のマイルストーン(医薬品発明企業への支払金)を⽀払うほか、販売数量に応じたロイヤルテイーの支払いを行う。また、ナノキャリアは製造に必要な原料の供給を⾏い、OEP社はこれに対する対価を⽀払う。
●OEP社への製造権付与に伴い、同社は台湾で医薬品製造子会社を設立して製造工場の建設を予定しており、当社は本子会社に出資する。
 
 新薬の開発と臨床試験は、欧米など先進国で実施するのが一般的。中冨社長は「台湾を含め、アジアで新薬の開発と臨床試験が行われるのは極めてまれ」と話している。
 
※『友華生技医薬股有限公司:Orient EuroPharma Co.,Ltd.』
 OEP(4120TT), OP(4166TT)という2つの台湾の上場企業を中心とし、台湾、香港、中国、アセアン(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム等)に開発・販売・製造拠点を持つ、台湾・ASEAN諸国を代表するリージョナルファーマ。
 同グループ代表のPeter Tsai氏は、米国アップジョン(現ファイザー)、エランを経て1982年にOEP創業。2008年から台湾製薬業協会の会⻑を務めている。グループ従業員は約800名。