台湾漫画家の描き下ろし展「ありがとう日本」開催で日本の台湾漫画市場を開拓

0
韋蘺若明のイラストの人物が着ているシャツには日本国旗がデザインされている(台湾文化センター提供)

 台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは昨年、台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(文化内容策進会/TAICCA=李明哲院長)と共同で「台湾漫画夜市展」を開催し、台湾人漫画家作品の日本における著作権ライセンス契約拡大が進んだ。さらに今年も再びTAICCAと協力し、「『ありがとう日本』イラスト展」及び「TAIWAN AUDIO COMIC EXPO-音とともに楽しむ台湾コミック展」を7月1日より開催した。

 開幕式は同日開かれ、台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表、日本台湾交流協会の谷崎泰明会長らが出席し、台湾から日本に漫画で謝意を伝える同展を参観した。謝代表は「台湾の漫画は最近、日本でよく受賞し、台湾の漫画は日本でも高く評価されるようになった。漫画を通して台湾と日本の若者文化交流を引続き強化していきたい」と挨拶した。また、日本からのワクチン支援に関して、「台湾の人々は善良で、感謝の気持ちを大切にする社会で、台湾には『食人一口、還人一斗』(恩を受けたら何倍もお返しする)という諺がある」と述べ、日本台湾交流協会および日本の各界の方々が今回の件で尽力されたことに対し、改めて心からの感謝の意を表した。

駐日代表処の謝長廷代表、日台交流協会の谷崎泰明会長らが出席し、台湾から日本に漫画で謝意を伝える同展を参観した

 谷崎会長は、「日本国際漫画賞には年々台湾からの素晴らしい作品が寄せられ、昨年は金賞が台湾からの作品だった。今回このような形で台湾の素晴らしい漫画作品を見ることができた。小学生の頃、漫画を読まずに勉強しなさいと言われたこともあったが、漫画を読むと絵も描けて、漢字も覚えることが分かり、私は漢字を漫画で覚えた。今でも人気の漫画があると読みたくなる」とし、漫画を通じた台日文化交流のより一層の深まりを期待した。また、「多くの台湾の方々から日本が台湾パイナップルを買ったことに対する御礼の手紙をいただいたが、最近は日本の方々からも日本が台湾にワクチンを贈ったことに、よくやってくれたと褒められることも多い」と話した。

 日本台湾交流協会は今年2月、「日台友情 謝謝台湾!」日本人漫画家の感謝メッセージ色紙展を開催した。東日本大震災の際に台湾からの支援に謝意を表すイラストを、日本の漫画家が色紙に描き下ろし展示したもの。「この温かい気持ちは台湾のコミック・アニメファンを感動させた」との理由から、台湾文化センターとTAICCAは今年の漫画展を決めたという。本展のメインテーマは「ありがとう日本」とした。

灰野都のイラスト(台湾文化センター提供)

 今年の展示は、10人の漫画家が「台日友好、台日の助け合い」をテーマにイラストを描き下ろし、感謝のメッセージを添えた。さらに、日本から台湾に贈られたワクチンに対する感謝の意味を込め、台湾が厳しい状況にあるときに届いた「恵みの雨」として、「日本から届いたワクチンに対するお礼のメッセージ」も。これは台湾文化センターがTAICCAに提案し、漫画家らがこれに呼応して実現したものだ。また、台湾オリジナル漫画を音声付きで表現した短編動画も同時に展示されている。

 今回イラストとメッセージを提供した漫画家は、小峱峱、韋蘺若明、英張、Gene、每日青菜、灰野都、楊基政、胚謎pemy、米宗子、許彤の10人。2020年日本外務省第14回日本国際漫画賞金賞を受賞した韋蘺若明は、「日本のような友達がいて本当にありがたい。日本大好き」と話した。2020年に京都国際漫画賞対象とイラスト優秀賞を受賞したGeneは「日本の文化が大好きです。台湾と日本の友情がいつまでも続くことを願います」とのメッセージを寄せた。このほか、台湾の漫画家からは、英張は「ワクチンのご提供、ありがとうござます。この恵みの雨のお蔭様で、台湾のみんなの気持ちが少し落ち着くことができました」。小峱峱は「今回は困っているときに日本が手を差し伸べてくれてありがとうございました。将来恩返しができればと思います」。台湾文化センターの紹介冊子のイラストを担当した許彤は「日本の方々本当にありがとうございます。コロナでこの厳しいご時世ですが、一日も早く皆と会えるように願います」とそれぞれメッセージを寄せた。

『ありがとう日本』イラスト展」

 なお、展示作品には多くの隠された創意工夫あるメッセージが込められている。例えると、韋蘺若明のイラストの人物が着ているシャツには日本国旗がデザインされている。每日青菜は日本の「たい焼き」と台湾の「タピオカミルクティー」を台日友情の象徴として描いている。米宗子は台湾のパイナップル、バナナ、タピオカミルクティー、台湾黒熊をイラストに描き、日本の方々に台湾をもっと好きになってほしいというメッセージを込めている、など工夫が凝らされた作品ばかりだ

 なお、台湾文化センターとTAICCAが昨年合同開催した「台湾漫画夜市展」では、25人の台湾漫画家の作品を展示し、日本の漫画著作権エージェント関係者を招き、TAICCAによる積極的なプロモーションも加わり実り多い成果が得られた、という。出展した台湾の漫画家のうち、これまでに阮光民『用九柑仔店』が日本との著作権ライセンス契約を結び、2021年末には日本での発行が予定されている。また最近では、AKRUの「百獣の笛」が角川出版の漫画雑誌「青騎士 2B号」に掲載された。さらに、TAICCAは同展の開催後にも10作を超える作品について5社程度の日本の出版社と日本語著作権ライセンス契約を進めている。

 台湾文化センターとTAICCAは、今年の展示でさらに漫画のジャンルを超えた応用を打ち出し、台湾漫画の注目度を高める事を目標とした。同時に、より多くの台湾の漫画家が日本市場に進出できる事を望んでいる。

「TAIWAN AUDIO COMIC EXPO-音とともに楽しむ台湾コミック展」

 今回出展する台湾オリジナル漫画は、常勝《閻鐵花(閻鉄花)》(大辣文化)、韋蘺若明《送葬協奏曲》(蓋亞文化)、米宗子《無能戀愛諮商中心(無駄な恋愛相談室)》(CCC創作集)、楊基政《請聽我的聲音!!(僕の声を聞いてほしい!!)》(東立出版社)、拆野拆替、胚謎pemy《第九號愛麗絲(第九号アリス)》(威向文化)、小峱峱《守娘》(蓋亞文化)、英張《採集人的野帳(植物コレクターのノート)》(蓋亞文化)、Gene《世界末日也要和你在一起(世界の末日もあなたと一緒)》(長鴻出版社)、每日青菜《Day Off》(留守番工作室)、以及小杏桃、灰野都《3次元男子戀愛攻略(3次元男子恋愛攻略)》(尖端出版)の10作品で、台湾の人気声優による声と、オリジナルサウンドを組み合わせ、音声付きの短編動画も作成した。

 なお、同展は東京・虎ノ門の台北駐日経済文化代表処台湾文化センターで2021年8月20日まで開催される。