コロナ禍の中の台湾訪問 藤重太理事が体験を語る 李登輝友の会がセミナー開催

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和服姿で講演する藤理事

「日本李登輝友の会」は9月24日、東京都内で第72回台湾セミナーを開催し、同会の藤重太(ふじ・じゅうた)理事が講演した。藤氏はコロナ禍で2020年3月以来、台湾に行っていなかったが、今年8月に台湾を訪れ、約1カ月滞在して帰国したばかり。「2年半ぶりの台湾で見聞きしたこと」と題して、自らの体験を具体的に語った。

 藤氏は1967年東京生まれ。高校卒業後、台湾に留学して以来、台湾関連のビジネスに関わってきた。台湾政府系のシンクタンク「資訊工業策進会」の顧問を長年務め、現在は自らが台湾で設立した富吉国際企業管理顧問有限公司代表として、台湾を拠点にビジネス活動を続けていた。

 藤氏はコロナ禍で台湾に行かなかったが、ビジネスの必要から台湾に行かなければならなくなり、台湾行きに踏み切った。台湾政府によるITを駆使したコロナ対策も見てみたかった。台湾政府が指定した専用アプリを自分のスマホにインストールして、渡航の手続きを進めた。

 指定された隔離用のホテル群の中から選んで予約すると、台湾到着後、空港でスマホをピッとやると、隔離者用タクシーが予約したホテルへと連れて行ってくれた。運転手と話す必要はない。ホテルに到着すると、フロントとの会話はライン(Line)。「食事の準備ができました」でプラ容器に入った食事が置かれた。

ホテルで食べた食事

 当時のルールでは、台湾到着の翌日を1日目として数え、3日間の「隔離(強制検疫)」、次いで4日間の「自主防疫」という実質8泊9日の「3+4」を同じ部屋で過ごすことになる。検査キットを2つ渡され、自主防疫期間に検査して陰性ならば、生活必需品の買い物などに限って2日間マスク着用で外出できる。再び検査して陰性なら、さらに2日間の同じように外出ができる。

 藤氏の場合、台湾に自宅があり「1室1人」の条件を満たしていたので、管轄する警察署外事局に申請して自宅への移動が認められた。ホテルを出る際、警察署から本人だけでなく、担当する署員30数人にもメールが行き渡り情報共有が徹底された。

 自主防疫が終わり、街中へ出ると、「思ったよりたくさんの人々が出ていた」という。公共の場でのマスクの着用率は老若男女ともほぼ10割。あるタクシーにたまたま乗ったら、「私(運転手)は3回予防接種を受けています」などのコロナ関連の個人情報の表示があり、藤氏が理由を尋ねると、「表示しないとタクシー運転手として仕事ができない」との答えだった。

 友人と面会したら、翌日、体調不良で検査したら陽性だったとのメールが届き、「不安になり薬局で検査キットを購入して検査したら、陰性だった。それで、ホッとした」と話し、市民の意識が高かったことを強調した。台湾では検査キットは薬局で購入できるほか、65歳以上には5セットまで無料化されていた。

 また、別の友人に会うと、「(その友人の場合は)学校に行っている子どもがいる家庭は、家族の誰かが外国人に会ったら、必ず学校に報告するルールになっている」と聞かされたという。

藤理事が講演した台湾セミナー

 藤氏は台湾のコロナ対策はIT化が進んでいただけでなく、それ以前の意識の問題として「台湾政府は入国して来る外国人はすべて陽性と想定して、コロナ対策を考えている。日本との大きな差だと思う」などと感想を話した。

 台湾行政院は9月22日、水際対策を大幅に緩和する方針を明らかにしており、近いうちに藤氏が経験したような「3+4」は過去のものになりそう。

 藤氏によると、台湾の一般人から「早く日本に(旅行に)行きたい」という気持ちをヒシヒシと感じたという。いろいろな人と話しをすると、人気の地は熊本県。大手半導体の「TSMC」が進める熊本工場で注目が集まっているわけではなく、人気コミック「ワンピース」の作者、尾田栄一郎さんが熊本市出身のことから、「ONE PIECE熊本復興プロジェクト」で県内各地に登場人物の銅像が建てられているためだ。藤氏は「台湾客の銅像巡りが流行りそう」と予想した。

 藤氏は、「台湾での体験などは(個人の)フェイスブックに詳しくアップしているので、参考にしてほしい」などと話している。

 ※この記事の中に出て来た話は、講演した藤重太氏が台湾を訪問した当時(今年8月9日~9月9日)に経験したことです。最新のコロナ対策、渡航条件は台湾当局などのHPで。