台湾、WBC 1次リーグに突破ならずも「ありがとう、私たちの英雄」

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第5回WBC1次ラウンドグループAは台中市で開かれた(写真:中央社)
対オランダ戦に臨む台湾チーム(写真:中央社)

第5回WBC(野球の国・地域別対抗戦)の1次ラウンドグループA組が3月8日に台中市の台中インターコンチネンタル野球場で開幕した。同12日までの日程で全5チームが総当たり戦で臨み2勝2敗で終える大混戦となった。勝敗数で順位を決まらなかったため、大会規定に沿って失点率が適用され、キューバとイタリアが準々決勝に進出した。台湾は5大会連続出場を果たしたものの、ホームのアドバンテージを活かせなかった。

招集から選手の出場辞退で大騒ぎ

台湾はチーム結成から指定された選手による出場辞退で騒ぎが起きた。問題となったのは、台湾一の長打力として期待されていた張育成選手だ。張選手は2013年から米国メジャーリーグ(MLB)でプレーしており、MLBの台湾人選手として初めての通算100安打を記録している。2022年11月18日に所属のボストン・レッドソックスからDFA宣告を受けて現在は無所属。台湾は張選手にMLB 出場の要請をしたが2023年1月に張選手より「メジャーリーグの出場に専念したい」との回答だった。

張育成選手(左から2人目)は2月13日、台湾チームと合流(写真:中央社)

しかし、これが台湾では問題視された。張氏はMLBでプロ生涯を続けたい意向で台湾兵役の補充役制度を選択したため、補充役の規定により同氏は5年間、国家代表からの招集を拒むことができない制度があるからだ。

張氏のSNSには台湾ファンからの批判が殺到。こうした事情も影響して本人は一転して大会の出場を決意した。台湾チームの招集に応じたことで問題は収束。さらに2023年2月16日にも元所属のレッドソックスと単年契約を結んだことも決めた。

激戦の末に2大会連続1次ラウンド敗退、チーム内「悔しい」の声も

グループAは台湾、オランダ、キューバ、イタリア、パナマ。各1回の総当たり戦で上位2チームが東京で行われる準々決勝に進出できる。台湾は3月8日のパナマ戦で5-12の黒星スタート。同10日のイタリア戦では両チームが激戦を繰り広げた末、林子偉選手、張育成選手、吉力吉撈選手のホームランが勝負の分かれた目に。

台湾チームの試合は4戦連続満席(写真:中央社)

張選手がホームランを打った後、軍礼をしで自嘲した事も話題になり、評価が一転してファンから「国防部長」というあだ名を付けられた。

満塁弾を打った張育成選手が敬礼(写真:中央社)

同11日のオランダ戦では張育成選手の満塁ホームランで9-5で勝利した。試合中に観客席が張選手に対して敬礼したシーンがMLBのホームページにも取り上げられた。翌12日のキューバ戦に勝てばグループ1位で準々決勝に進出できる。

観客は大活躍の張選手に敬礼(写真:中央社)

しかしキューバ戦には最初からリードを許し続け、9回表に張育成選手の安打で1点を奪ったが後続が振るわずに1-7で敗戦した。その後のオランダ対イタリア戦にイタリアが7-1で勝ったため、全5チームが2勝2敗となった。失点率による最終順位で台湾は最下位。グループ突破は叶わなかった。

試合終了後、現場のスクリーンには「ありがとう、私たちの英雄」が映り、ファンが総立ちで拍手と喝采を選手に送った。

林岳平監督(写真:中央社)

林岳平監督は大会の総括として「ピッチャーの実力が世界のレベルに及ばなかった」とコメント。また大会中の表現を振り返ると「やはり悔しいところはあるが、選手たちが決意を示して最後まで戦ってくれた。台湾頑張れ」と語った。

張育成選手は満塁弾含む2HR8打点の成績でMVPに選出。張選手はキューバ戦の後、メディアの取材に対し「ファンたちの熱いサポートに感謝したい。米国では孤独感が強かったが、ここに立ってファンたちに愛されていると感じている」と心境を吐露した。張選手のSNSには「ありがとう」「メジャーリーグでも頑張れ」「私たちの国防部長だ」と祝福のコメントが殺到した。

台湾敗退で日本にも「惜しい」 チアガールが超人気

日本にも大人気を得る「クラシック・ガールズ」(写真:中央社)

台湾が敗退したことは日本にも伝えられ「台湾敗退」がトレンド入り。一番注目されたのは、台湾チームを応援しているチアリーダー選抜「クラシック・ガールズ」。日本にもファンがたくさんいる彼女たちだが、台湾の敗退を受けて東京ドームで彼女たちの姿を見ることができなくなった。SNS上では「チア来てほしかった」「チアだけでもいいから日本に来て」などの声が上がった。このほか、台湾チームが奮戦した姿を評価し、台湾の敗退を惜しんだコメントが数多かった。